VERBAL

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2020.12.02インタビュー

VERBALさんに聞く、XRが切り開く音楽、エンターテイメントの可能性

新型コロナウイルスは、音楽やエンターテイメント業界にも大きな影響をもたらした。初期の段階からライブやイベントは中止・自粛を余儀なくされ、関係者全員に打撃を与えた。そんな苦境の中でも、アーティストやエンターテイメント業界は試行錯誤を続け、オンラインライブやXR(※)に新たな可能性を見出そうとしている。

※VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)と呼ばれる技術の総称

日本財団が12月より配信するオンデマンド動画配信プログラム「STARTLINE(スタートライン)」では、コロナ禍×新しい時代にまつわる若者向けのさまざまなテーマを掲げた有識者のトークセッションをお届けする。

その一環であるセッション「“XR”が広げる音楽とアートの可能性」では、音楽ユニットm-floのバイリンガルラッパーとして人気を博すVERBAL(バーバル)さん、ライブストリーミングスタジオDOMMUNEを率いてコンテンポラリーな活動を行う現“在”芸術家の宇川直宏(うかわ・なおひろ)さん、写真家で映画監督としても活躍する蜷川実花(にながわ・みか)さんの3人が登壇。

新型コロナ禍を経て変化を遂げつつあるエンターテイメントの未来について議論を交わした。 今回はVERBALさんに取材を敢行。新型コロナウイルスが蔓延する中でのアーティストとしてのチャレンジや、その活動の中で感じる音楽シーンの変化についてお話を伺った。

――新型コロナ禍による音楽シーン、エンターテイメント界全体への影響はどのように感じてらっしゃいますか?

VERBALさん(以下、敬称略):バタンと、ドラスティックに全てが止まってしまった感じがあります。ライブやツアーを開催できなくなって、アーティストはもちろんバックヤードの方たち、ビジネスを組んでいる方たちにもすごく影響があり、業界全体でかなりダメージが大きかったですね。

2019年に20周年を迎えたm-flo としてはアメリカを中心にいろんなライブを行う予定でしたが、渡航ができなくなってしまって。2020年4月に参加する予定だった「コーチェラ・フェスティバル」(※)も、一度は10月に延期され、結局開催そのものができなくなってしまいました。
※アメリカ合衆国・カリフォルニア州インディオの砂漠地帯「コーチェラ・ヴァレー」にて行われるアメリカ最大級の野外フェス

音楽シーンにしても、世間の目が厳しくなった感はありましたね。歌詞の内容だとか、曲もワチャワチャしていると、こんな時期にパーティ系の音楽とかどうなの?みたいな雰囲気もあって。僕たちは「ポジティビティ」を表現したいからやりたいって思うことも、ちょっとピリピリしてやりづらい空気がありましたね。

VERBAL インタビュー01

――VERBALさんご自身は自粛期間中どのようにお過ごしでしたか?

VERBAL:今まで忙しさゆえにできなかったことをいろいろとやりました。例えば、徹底的にプログラミングを学びました。僕がやっている音楽性もあって、テクノロジーに精通しているイメージを持たれがちなんですが、意外とそうでもないんです。ずっと気になっていたソフトとかもなかなかキャッチアップできずにいたので、音楽制作ソフト「Logic(ロジック)」の新しいものをダウンロードして覚えたりしていました。

あと音楽の原盤ビジネスについても勉強しました。今の音楽業界はCDが売れない、ストリーミングもそれほど伸びていない状況なので、アーティストの契約形態とか、どういうビジョンを持ってミュージシャンをやっていくべきなのかとか、すごく考える時間になりました。

そういう意味では、裏方にいるスタッフの苦労がとても分かりました。デスクワークみたいなことをする機会が多かったんですけど、そういうの意外と好きなんです(笑)。

自分自身のOSが古かったのをアップデートした、みたいな感じですね。

――エンターテイメントの規制や自粛がある中で、ライブも試行錯誤されたそうですね。

VERBAL : 新しい試みとしては、ドライブインライブを開催しました。フィジカルなライブができなくなってから、ソーシャルディスタンスを保ちながら何かできないかいろいろと調べました。そんな中、たまたまYouTubeでドイツのベルリンで開催されたドライブインライブの動画を見たんです。これなら自分にもできるんじゃないかって。

それからすぐに東京タワーの駐車場で、車100台分のスペースを使って実験的に開催しました。車の中だとお客さんの反応も見えづらいこともあり、「寒い感じになったらどうしよう」と不安はあったんですけど、実際にやってみたらすごく楽しかった。車の窓を開けて盛り上がってくれたり、車のライトを使ってチカチカと反応してくれたり、想像していた以上にコミュニケーションを楽しむことができました。苦肉の策みたいな感じに見えたらいやだな、と思いましたが、今はもっと可能性を掘り下げることができたらと思っています。

――VERBALさんご自身もそうですが、所属されるLDHも、新型コロナ禍の中で社会貢献活動にも取り組まれていましたね。

VERBAL : ちょうどBlack Lives Matter(※)の時期と重なっていたんです。アメリカにいる僕の友人の中には、ヒップホップをはじめ直接コミュニティに影響のあった人たちも多くて。現地へ渡航はできないし、日本にいて何ができるかを考えて、最善を尽くしました。

※アフリカ系アメリカ人に対する警察の残虐行為をきっかけにアメリカで始まった人種差別抗議運動

まず、m-floとしてアメリカ発のオンラインチャリティライブに参加したほか、僕が手がけるファッションブランド「AMBUSH®(アンブッシュ)」の活動の一環として、現地の子どもたちを支援する団体へ収益金の一部を寄付させていただきました。

また、デザイナーのNIGO®さんが筆頭になり、AMBUSH®、sacai(サカイ)、NEIGHBORHOOD®(ネイバーフッド)などいろんなブランドが一緒になってコラボ Tシャツを作り、その収益を全額寄付するというプロジェクトにも関わらせていただきました。

LDHとしては、アーティストやミュージシャン、音楽業界関係者の方たちを応援するためのプロジェクト「GO ON MUSIC Project」を8月にスタートしました(2020年11月30日まで)。東京・羽田にあるライブ・イベント・スペース「LDH Kitchen THE TOKYO HANEDA」をライブの生配信や収録などの会場として、設備なども含め無償提供したんです。

オンラインライブや動画を撮影するにしても、スタジオを借りて照明や機材を使うとなると、それだけで結構な費用がかかります。特に若手の方にとってはかなりの負担になるので、その支援に少しでもなればと実施しました。反響は高く、スケジュールも連日埋まりっぱなし。ちなみにm-floも活用させてもらいました(笑)。

VERBAL インタビュー02

――STARTLINEではセッション「XRが広げる音楽とアートの可能性」に登壇されますが、VERBALさんご自身、エンターテイメントにおけるXRの可能性をどのように感じていらっしゃいますか。

VERBAL:バーチャルの世界での盛り上がりに期待にしています。2019年2月にアメリカの人気DJマシュメロが「フォートナイト」というオンラインゲームの中でライブを開いて大きな話題になりました。2020年4月にも人気ラッパーのトラヴィス・スコットがライブを開いて、世界から2,700万人が参加しました。

「フォートナイト」の魅力は、友達同士でコミュニケーションを取ったり、ダンスをしたり、ゲーム自体しなくてもいろんな楽しみ方ができるところ。そういう寄り道的なエッセンスがゲームの魅力を深めているんだと思います。

プレイしている中でライブなんかに参加できると、「フォートナイト」って粋なことしてくれるじゃん!って思いますよね。コンテンツを提供する側としては、大きな可能性を秘めた“新しいフィールド”。いつか僕たちも「フォートナイト」などのようなスペースでライブができたらと思っています。

あと注目しているのはVR。VR chat やclusterなどバーチャル空間でライブやアート、イベントなどが体験できるプラットフォームがいろいろできていますが、そんなプラットフォームに会場を設けて、自分はもちろん、海外からもアーティストを招聘してフェスを開いてみたいですね。

最近では「HIKKY」というチームが開催している「Virtual Market」というバーチャルイベントなどが気になっています。VRでは没入感のある仮想空間の中で、この会場なんか違うなと思ったら別の会場に行ったり、グッズを買ったり、現実の世界と同じことができたりします。もう少し技術が進んだら、とても面白い空間になると思うし、バーチャルという空間に強く興味を感じます。

――オンラインでのコミュニケーションが広がったからこそ、逆にリアルの良さなど感じられることはありますか。

VERBAL:オンラインって、明確な目的があるコミュニケーションにおけるファシリテーターのようなものだと思うんです。例えばオンラインでパワポを使ってプレゼンするとか、メールでデータをやり取りするよりクラウドでデータを共有して、いつでもみんなが見られるようにしておくとか、スムーズに事を進められる。

けれど、スムーズで便利がゆえにコミュニケーションを深めるのに必要なノイズのようなものを生まない。ミーティングにしても対面で温度感や雰囲気が伝わった方が、細かなニュアンスまでちゃんと伝えられますよね。

ファッションの仕事をしていても感じることなんですが、デザインや柄はオンラインで伝えられても、素材や質感まで相手に伝えられない。ディテールまで見て、実際に手で触って感じてみて、感動して人は買うわけなんで。いまはそこにデジタルの限界を感じますね。

――新型コロナ禍は、音楽やエンターテイメントの本質が問われた期間でもあったかと思います。コンテンツを提供する側に、何が求められると感じていますか。

VERBAL:コロナ以前に、ストリーミングで音楽を楽しむことが当たり前になった時点で、ある意味音楽業界の常識が崩れました。至るところにエンターテイメントがごろごろと転がっていて、視聴者は見たいときに見たいもの見る、聴きたいときに聴きたいものを聴く。作り手はコンテンツを作ってファン層をつくる、みたいなことが簡単にできるようになりました。

今はメジャーとかマイナーとか関係なく、本当に良いものしか人に刺さらないし、メイクセンスするものしか残っていくことができない時代になったと感じています。視聴者はいい意味でよりわがままになりました。だからコンテンツを作る側も、もっとその先にある感動を提供できないといけない。人を惹きつけるものってなんだろう?と追求し続けなければいけない時代になった。すごくプレッシャーは感じますが、とてもワクワクします。

――「STARTLINE」のトークセッションを終えてのご感想はいかがですか?また、これから視聴する方へのメッセージをお聞かせください。

VERBAL:セッションを通して、宇川さんや蜷川さんとはもっと話したいことがたくさん出てきました。宇川さんがアバター(分身)としてイベントに登壇した「バーチャル渋谷」の話は、自分もバーチャル空間を使って何かやりたいと思っていたので、今度また詳しくお話を聞ければと思っています。

蜷川さんは、コロナの中でも映画を作ったり、オンラインでも楽しめる写真展を開いたり、アーティストとして非常にプログレッシブな方。フィジカルな感動を、デジタルでもっと立体的に見せられたらという話をできたのが、とても有意義でした。

僕はもともとバーチャル空間やXRに興味があり、日本でももっと広がってほしいとずっと思っていました。音楽とアートの新しい可能性についてはまだまだ話し足りないことがあるのですが、皆さんにはぜひ、このセッションを入り口として、エンターテイメントの可能性に興味を感じていただければと思っています。

〈プロフィール〉VERBAL(バーバル)

音楽ユニットm-floでの活動の他、超豪華ラップグループ TERIYAKI BOYZ®、クリエイティブユニットPKCZ®、HONEST BOYZ® のメンバーとしても知られ、独自のコネクションを生かし数多くのアーティストとコラボレーション。Pharrell Williams、Kanye Westなど大物海外アーティストとも交流が深い。

デザイナーのYOONと共に2008年にスタートしたファッションブランド ”AMBUSH®(アンブッシュ)” ではCEOを務め、Louis Vuitton(Kim Jones)、sacai、Nike、CONVERSE、Rimowaなどとのコラボレーションを実現させている。2016年には東京にてブランド初となるショップを東京・渋谷にオープン、「ファッション界を変える世界の500人」に精選されるなど、その活躍の場は多岐にわたる。

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“XR”が広げる音楽とアートの可能性 ~音楽とアートは死なない~

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