福島直央

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2020.11.20インタビュー

コロナ禍を通じて福島直央さんが感じた、「LINE」というプラットフォームの未来

SNSを活用した健康調査や遠隔治療を可能にする超聴診器など、テクノロジーの発展により医療・保健分野の可能性は過去に類のない広がりを見せている。しかし一方で、医師の人材不足や病院の経営難、医療費負担の増加といった課題は変わらず横たわっている現状もある。果たしてテクノロジーは、このような状況を打破するための切り札となり得るのだろうか。

12月から期間限定で配信するオンデマンド動画配信プログラム「STARTLINE(スタートライン)」では、コロナ禍を経た新しい時代にまつわるさまざまなテーマを掲げ、有識者のトークセッションをお届けする。

その一環であるセッション「2030年のヘルスケア ~テクノロジーが刷新する医療・保健の未来~」では、LINEを用いた新型コロナウイルス感染症対策を担当したLINE株式会社 公共政策室 室長・福島直央(ふくしま・なお)さんと、心疾患の診断をアシストする超聴診器を開発するAMI株式会社 代表取締役CEO・小川晋平(おがわ・しんぺい)さんが登壇、意見を交換する。 今回は福島直央さんにご登場いただき、「LINE」というプラットフォームが秘めるヘルスケア分野における可能性について話を聞いた。

――LINEは本年3月より、厚生労働省と協力した「新型コロナ対策のための全国調査」を実施しました。この調査が実現に至るまでの経緯を教えてください。

福島さん(以下、敬称略):厚生労働省との協働が始まったのは、新型コロナウイルスの流行が話題になり始めた1月末頃です。当初、2月初旬に電話窓口の負担を軽減するため、ウイルスの発生状況や予防法などの問い合せについて、AIチャットボットが24時間必要な情報を提供する「新型コロナウイルス感染症情報 厚生労働省」LINE公式アカウント(別ウインドウで開く)を作成しました。

福島直央 インタビュー01

これと同時期に、客船ダイヤモンド・プリンセス号内での集団感染が発覚。ここではソフトバンクが提供したiPhone2,000台にLINEをインストールし、乗客・乗員に配布。専用アカウントを通じた情報提供を行うほか、医師や心理カウンセラーへのオンライン相談を可能にしました。

その後、ウイルスの影響が全国に広がりつつある状況を受け、社内で検討した結果、8,300万人のLINEユーザー(当時の月間アクティブユーザー)に協力を仰げば感染の指標となる発熱や体調不良の状況を把握することができるのではないか、という結論に至りました。

このデータを厚生労働省に提供することで、より適した対策が行われるのではないかということで、3月30日に厚生労働省とLINEが協定を結び、3月31日にLINE公式アカウントから全ユーザーに向け「第1回『新型コロナ対策のための全国調査』」が送信されたのです。

福島直央 インタビュー02

――国内のアクティブユーザー約8,300万人を対象にSNSを通じて送信・回収する、という前例のない大規模SNS調査となりました。どのような点に注力しましたか?

福島:その時点でやったことはなかったとはいえ、8,300万人に調査を送信することはシステム上可能でした。しかし問題となったのは回答を回収する作業のほう。というのも、送信後1分以内に何百万人もの方々がアクセスした場合、サーバーに大きな負荷がかかって画面が表示されない、エラーが出る、などのトラブルが発生する可能性があります。せっかく手元に届いても入力できないのではユーザーも協力する気を失ってしまいます。

実はこの調査実施が決定したのは3月25日で、その段階で当社にはそれだけの大規模調査に耐えうるキャパシティを持つインフラがありませんでした。しかし決定直後から続々と技術者が集まり、膨大なトラフィックをさばいて情報を受け取るための作業を開始。並行してアンケート画面なども整備されて、3~4日で全システムを構築しました。あのスピード感には「うちの技術陣はすごい」と僕も驚いてしまいましたね(笑)。

その時まで災害時などに多くのユーザーに対してプッシュ通知をしたことはあっても、調査結果を回収したことはありませんでした。つまり送信後の反応については全くの未知数。しかし蓋を開けてみると回答率は3割、約2,400万人もの方々から結果を回収することができたんです。

――3月の開始から8月まで、計5回の調査が実施されました。これまでを振り返って感じられる本調査の成果と、今後の課題についてお聞かせください。

福島:これだけ多くの人からの情報を短時間で集めきった、という点が本調査の価値である、と認識しています。大規模調査の代表例としては「国勢調査」がありますが、我々よりも多くの回答を集める一方で、結果の回収には数カ月を要します。

しかし今回の「新型コロナ対策のための全国調査」に要したのは約2日で、多くが1日目に回答しています。1日ちょっとで数千万人の声が集まる仕組みが作れた上、「このエリアに健康状態の悪い人が多そうだ」という全国の状況を一定程度つまびらかにできたことが、1つの成果だったのではないでしょうか。

とはいえ、全ユーザーに対するこのような調査手法はLINEにとって“伝家の宝刀を抜く”ようなもので、多用することは想定していません。あくまで災害など社会の危機的状況に応じて他に手段がないときに使用するものという認識で、一般的な調査についてはアンケートモニターによる「LINEリサーチ」をはじめとする他のサービスで今まで通り実施されると考えています。

福島直央 インタビュー03

――医療相談の実施やクラスターの早期発見への貢献など、今回のコロナ禍を通じて医療・保健分野におけるプラットフォームとしてのLINEの可能性が広がってきた、と言えるのではないでしょうか。

福島:すでにその動きは始まっていまして、これまでも医師に直接テキストで健康相談ができる「健康相談サービス」を実施していましたが、今後新たにLINEビデオ通話を利用して医師の診察を受けることができる「LINEドクター」を開始することを発表しました。新たなアプリをダウンロードする必要がなく、クリニックの検索から予約、診療から決済まで全てLINE上で完結する、というのがその仕組みです。

福島直央 インタビュー04

また、一部の病院ではLINEによる病院の予約サービスも始まっています。例えば福岡市の「福岡市立こども病院」では、再診予約の手続きをLINEに置き換えたところ、かかってくる電話の件数が半分に削減され、医療現場の負担軽減につながりました。

こども病院を利用する親世代は30~40代が中心で、LINEユーザーが多いことも効果が出た背景にあるのでは、と考えられます。これからは初診の予約などもLINEで行えると良いのではないか、という意見も出ており、発展が期待されているところです。

――近い将来、人と医療に対してテクノロジーの進化はどのような影響を与えていくだろうと想像していますか?

福島:以前、遠隔医療の実証実験を見に岩手県の遠野市に行ったことがあります。産科医の不在が続いている同市では、助産院にバイタルデータなどが取れる専用の機器を設置し、大船渡市にいる産婦人科医からオンラインで遠隔健診が受けられるようになっていました。現在、次世代の通信規格として「5G」が登場しましたが、これからネットワーク環境が良くなって大容量の通信が可能になれば、遠野市の事例を越えて動画やデータを駆使した様々な医療の手法が実用化できると考えられます。

また例えば健康診断の結果があまり良くなかった方に対して、LINEのPUSHメッセージで改善ポイントを1日に1項目ずつなどで通知を行う、ということも1つの手法です。例えば「今日は1万歩歩きましょう」とかですね。

これをユーザーが意識することによって健康は改善していくと考えられますし、そのデータをきちんと分析して、AI技術も併用していくことによって、今までよりも健康改善の手法が発達する可能性があると思います。

これは僕の個人的な考えですが、日本の人口減少は避けられない事実である以上、電話を取る、予定を管理するといったデジタルに移行できる作業はどんどんデジタルに任せて、人間はより人間にしかできない作業、対話や新しい技術・価値の創造に集中していくことが必要なのではないでしょうか。

――「STARTLINE」では、AMI株式会社の小川晋平CEOと対談します。セッションに寄せる期待と、視聴者へのメッセージをいただけますか?

福島:僕たちのようなITを使ったコミュニケーションを生みだす企業ができることには限りがあります。AMIは遠隔治療を可能にする聴診器を開発していらっしゃいますが、そういう物理的な検査機器を手掛ける会社と議論をすることで「今後、こういうものを世の中に送りだしていけば、医療が発展していくのではないか」という未来につながる話ができるのかもしれません。我々もまだ想定していない新しい可能性に話が及ぶことを、非常に楽しみにしています。

〈プロフィール〉福島直央(ふくしま・なお)

LINE株式会社 公共政策室 室長。三菱総合研究所などで情報通信政策に関する研究・コンサルティングに従事。2018年よりLINE株式会社に入社、官公庁や自治体を対象とした渉外業務や、公共セクターに向けたLINE関連サービス利用に関する提案、CSR活動、産学連携業務などを担当している。

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