関美穂子

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2020.12.15インタビュー

グラフィックレコーダー・関美穂子さんが大切にする「伝える」ということ

人々の対話や議論の内容を、イラストや文字を用いて可視化し、記録・共有する手法「グラフィックレコーディング(以下、グラレコ)」に近年注目が集まっている。要点が分かりやすく整理されて話の流れが俯瞰して見られるほか、内容が直感的に理解しやすくなることで対話や議論が促進されるのが最大の特徴だ。

オンデマンド動画配信プログラム「STARTLINE(スタートライン)」では、全てのセッションにおいてグラレコを導入しているが、今回は4名のグラフィックレコーダーのひとり、関美穂子(せき・みほこ)さんにご登場いただき、「伝える」ことに秘められた可能性について話を伺った。

――最近、需要の高まりを見せている「グラレコ」ですが、まずはそれがどのようなもので、どういった特性があるのか教えてください。

関さん(以下、敬称略):議論や会話を聞きながら、内容をビジュアル化してまとめていく記録・共有法のことを「グラフィックレコーディング」(以下、グラレコ)と呼んでいます。そのやり方やテクニックはグラフィックレコーダー(描き手)によりさまざまですが、抽出した要点を、文字だけでなく図や絵を交えて視覚化することで、多くの人に対して直感的な理解を助けることが共通している特性です。

「STARTLINE」では、議論の進行と同時にリアルタイムでビジュアルを作成する方法で進行しましたが、中には録音・録画された対話を全て聞き終わってから情報を整理する依頼もあります。

内容を漏れなくまとめたい、という場合だと録音・録画で作成するほうが向いているのかもしれませんが、「STARTLINE」のようなリアルタイムの記録は、対話の途中でグラレコを見ることで、これまでの流れが俯瞰して理解でき、対話を深めやすくなることが大きな特徴で、私自身もそういった「現在進行形の対話を濃くする助けになる」という部分にグラレコの魅力を感じています。

関美穂子 インタビュー01

――グラレコという記録手法は近年注目を集めていますが、関さんがグラフィックレコーダーを志した経緯について教えてください。

関:以前は全く違う仕事に就いており、地元である鹿児島県の大学で観光人類学を学んでから旅行代理店に勤務していました。その後、総務省が実施する「地域おこし協力隊」に参加し、鹿児島・下甑島(こしきしま)で地元の方々と一緒に観光商品の企画をしていたのですが、その時さまざまな業務を掛け持ちして忙しい地元の人たちにも会議で話された内容が分かりやすくなるよう、絵と文字を使ってメモを時々とっていたのが始まりです。

もともと学生時代にノートを取るときも、文字だけでなくイラストを取り入れながら1枚の図のようにまとめるタイプでした。その延長のような感覚で行ったのですが、地元の方々に思いのほか喜んでいただきました。

協力隊の任期を終えた後は次にやりたいことも見つからず、いったんグラレコから離れていました。その時、起業を志す友人から「起業に向けてやりたいことがたくさんあるのに、全然頭の中がまとまらない」と相談され、彼女の話を聞きながら思考の内容を図にまとめて渡したところ、「私の頭の中が1枚にまとまっている!」と感激され、1年後に起業に成功。その図を壁に貼って毎日眺めていたことが、原動力になったと言っていただきました。

その体験をきっかけに、1対1で相手の話を聞きながらグラレコで思考の整理と俯瞰をサポートするサービス「可視カフェ」をスタート。現在までの4年間で約200人の方からご依頼をいただいています。

「可視カフェ」を立ち上げてからは、鹿児島県の未来について語り合う「鹿児島未来170人会議」というプロジェクトにも呼んでいただき、登壇者の発表をビジュアル化してまとめる機会に恵まれました。それがきっかけで、地元企業の経営会議や商品開発会議などにも声をかけていただけるようになり、グラフィックレコーダーの道に踏み出したんです。

拠点を鹿児島から東京に移してからは、グラフィックレコーダー同士の横のつながりも増え、仕事の機会も増えています。グラレコへの注目が高まっていることを感じていますね。

関美穂子 インタビュー02
Photo by 齋藤商店

――分かりやすく伝わりやすいグラレコを作るために、どのような工夫をしているのでしょうか。

関:私の場合はポイントが3つあります。1つ目は線で囲んだり、色を変えたりして「論点ごとにエリアを分ける」こと。例えば、私がグラレコを担当したセッション「『あきらめない』ライフデザイン ~これからの時代の『家族』とは、『家庭』とは~」では、「自分の意識の中」を水面下、「社会で実際に起こっていること」を水上にあるようなイメージで書き分け、話されたトピックがどちらに位置するのかを明確化しています。

2つ目は「トピックのつながりを意識する」こと。矢印や線などで関係性を図でつなげることで「この話が出た結果、こういう問題提起につながったんだ」といった流れが視覚的に理解しやすくなります。

一番難しいのが3つ目、「要素を取捨選択する」ことです。というのも「STARTLINE」のように密度の濃い話題がたくさん出てくる場だとしても、会話の全てを描き切ることはできません。

伝わりやすさを考慮すると、100の要素があるとしたらそのうち10~20程度にポイントを絞り込む必要があり、どの部分が視聴者の方々に寄与するのかを瞬時に判断しなくてはいけない。

そのためには、あらかじめ「STARTLINE」の企画が目指すことや各セッションのテーマを「判断の軸」として自分の意識にしっかりインストールしておくのが大切です。その「軸」があるから、事例を細かく描くべきか、抽象的な概念を表現するべきか、感情的な部分を取り上げるべきか、なぜその話をしているのかなどポイントが抽出できるのだと思います。

――グラフィックとしての「描く」部分が注目されやすい半面、「聞く」力や「整理する」力も欠かせないお仕事なんですね。

関:そうですね。普段の生活で家族や友人らと会話をしている時、相手の話を聞いているようで、実はどう返答するかに気持ちがいってしまっていることってありますよね。でも、グラレコを行うときは「聞くこと」に最も集中しています。今の話は同じテーマの中の1つ深いレイヤーなのか、それとも先ほどの話題と対等な関係の新しいテーマなのか、パソコンのフォルダを分けるようなイメージで対話の階層を意識しながら聞き、頭の中で整理をし続けます。

とはいえ、手は動かし続けなければいけないので、進行中の会話全体にもまんべんなく耳を傾けつつ、「枝葉ではなく、幹に関わる話が出てきた」と思ったら、脳内に一時保存しておいて、関連事項を聞き終えた瞬間「さっきのを描こう」と頭の中から取り出すようなイメージですね。セッションが終わった後はふらふらで、毎回甘い物が食べたくなりました(笑)。

関美穂子 インタビュー03

――グラレコがあることで「伝わる」「伝える」ことの可能性に深みが増していくような印象を受けました。

関:鹿児島で会議のメモをとった時も、友人の起業への思いをまとめた時も、そして「STARTLINE」でも私の原動力は同じで「もったいない」という気持ちなんです。

例えば「子育てに優しい街」というテーマで対話を行うとして、その言葉に対するイメージは一人ひとり違うかもしれないのに、文字だけだとなかなかそれに気付くことができません。そのままだと、文字の裏にある大切なアイデアや意志が埋もれてしまい「なかったこと」になってしまうかもしれない。

しかし目の前でイメージをビジュアル化していけば、認識のすり合わせがしやすくなりますし、多くの人に伝わりやすくもなります。グラレコが社会や、一人ひとりの人生を良くする意志や願いを実現する助けになれば、という思いが私のモチベーションになっていますね。

――今回の「STARTLINE」の中で、グラフィックレコーダーの目線から印象的だったセッションはありますか?

関:私が担当したセッション以外では「あなたの知らないトイレの世界~世界を救うトイレ~」は、とても興味深く拝見しました。スピーカーの2人の対話がとてもポジティブでワクワクしたムードに満ちていて、グラレコにもその明るく元気な雰囲気がしっかりビジュアライズされている。文字だけの議事録では、場の空気感までは表現できません。これこそ、グラレコならではの良さであり、強みだなと感じました。

私が担当したセッションでは「決断の裏側 ~前例のない危機を前に、リーダーはどう決断したか~」です。リーダーの方々の意識をどう可視化するかが重要なポイントで、集中して描き終えてみたら、思いもよらず多く用いていたのが「矢印」。現在起こっていることだけでなく「その先」に意識をおいている、というリーダーの共通点が「矢印」として表れたのだ、と気付かされましたね。

結果として、彼らの意識が向かう先や視点が交わるポイントがより俯瞰でき、熱量を持って伝わるような記録になったと思います。

関美穂子 インタビュー04

――さまざまなセッションを間近で観覧した関さんから、「STARTLINE」の視聴者に向けてメッセージをいただけますか?

関:今回、最初にグラレコを行ったのはベストセラー『シン・ニホン』の著者でヤフー株式会社CSOの安宅和人(あたか・かずと)さんによるスペシャルセッション「安宅和人が語るスタートラインとは」でした。その時まで私はどこか「しんどさ」を抱えていたんですね。コロナ禍で季節の楽しさが少ないような1年でしたし、テレビをつければ暗いニュースばかりで、世の中大丈夫だろうか、1年後にはどうなっているのだろうか、といつもどこかに息が詰まるような感覚があったと思います。

そんな時に安宅さんの「変わらないと思っていた社会が今はほぐれるタイミング。幕末や戦後など、今までの当たり前が変わる時代にはさまざまな可能性が芽吹く」という話を聞き、つらい、大変だと思う状況も見方によっては面白くできるのだ、とハッとして、元気が出てきました。

今回のコロナ禍は、私たちが体験したことのない危機なのかもしれません。ですが登場するスピーカーの方々は、この状況においてもすでに「芽吹いている」人たちばかり。私が感じたのと同じように、彼らのセッションを通じて、視聴者の皆さんにも未来に向けた希望のエッセンスが見つかることを願っています。

〈プロフィール〉関美穂子(せき・みほこ)

アラワス代表。旅行代理店勤務、地域おこし協力隊への参加を経て、2017年よりフリーランスのグラフィックレコーダーとして独立。2019年より拠点を鹿児島から東京に移転、企業内やイベントにおける議論・対話の場でのグラフィックレコーディングの実践を行うほか、個人と一対一で対話しながら思考の可視化を行うサービス「可視カフェ」を行っている。

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